9月14日に京都のCLUB METEROで行われた、STILL ECHOはここ数年に見たイベントの中でもかなり完成度の高いイベントだった。自分自身が関わっていたというひいき目もあるかもしれないが、一般 ギャラリーとしてその場に居合わせたとしてもきっと同じ感想を漏らすに違いない。

 まず、会場に入ると吉原眞が既に演奏をはじめている。その静かな電子音は単調で起伏がないように聞こえがちだが、その音像には様々なイメージが確実に見え隠れする。煌めきでもなく、屑でもない、独特なる音の気配。それを感じているうちに、このイベントの楽しみ方、過ごし方を人々は直感で感じたに違いない。吉原眞の背後のスクリーンには、彼が操るPowerBookG3のデスクトップが映し出され、音の動きを視覚的に追うことが出来るのだ。そこに意識を向けていくうちに、人々は徐々に自分の居場所を見いだしはじめるのである。

 その映像にしだいにVISUALチームのUMANAMIの映像がオーバーラップする。同時に、レジデンツDJのKAZUMAのサウンドも吉原眞のサウンドに気配を合わせるように音を放つ。彼は吉原眞の世界に親和性を持たせながらも自分の世界を徐々に構築する。MIXというより作曲、演奏に近いプレイ。こうして徐々にフロアに彼の音が浸透し、静かな音の気配の中にビートの芽が生まれる。UMANAMIの映像も、徐々に独自の世界でスクリーンを彩 る。それは、抑制をきかせながらも、決してエゴイスティックな方向にはしらない。グルーブ感と美意識と真摯な姿勢の合間にパンキッシュな遊戯性が見え隠れする。後半まで映像を担当する彼らの映像は、出演するアーティストの音を楽しむ上で重要な役目を果 たすのである。

 そして、同様にPowerBookG3を持って丸谷功二が現れる。彼のサウンドも現代音楽をベースにしたエレクトリックミュージック。ビートはなく、たき火で薪が割れるような、あるいはラップ現象のような音像がフロアに漂う。実験的な曲に続いてアンビエントな優しさを携えた曲へと続き、空間が穏やかな緩みを見せる。

 そしてまた、KAZUMAのプレイをはさんで山中透+SOFTPADの登場。ダムタイプの山中透とSOFTPADのコラボレーションで演奏作品は「How They Get the Way TheyAre」と呼ばれるもの。山中氏によると「移動」というものをテーマにした作品だということ。しかも、このコンビネーションでCDリリースの予定があるらしい。よって、演奏も単なるセッションの域を越えた完成度の高いものなのである。ミニマリズムとテクノの様式美と浮遊感、そして恵まれた低音が作る存在感。そこにSOFTPADの映像チームによる、ロードムービー的なドラマツルギーのないストーリーがスクリーンに映し出される。そんな彼らの音と映像を眺めるうちに、ふとある文章が脳裏をよぎった。

 素敵な街並みや壮大な風景、あるいは印象的なシーンに出会ったとき、その感動を誰かに伝えるにはどうすればいい? 写 真に収める?絵? あるいは文章に書きとめればいいのか? それは、「その風景を見て感動し、自分自身が変わってゆくこと…‥」、星野道夫の「もうひとつの時間」というエッセイの中にそんなくだりがあったのだ。山中透+Softpadの世界をさらに表現するには、どうすればいいかと思った時にフラッシュバックしたのだ。どんな音楽でもそうなのだが、その内容を言葉にすると一気に安直になってしまう。しかし、彼らの世界を体験した人の中にはある種の変化を得た人が少なくないはずだ。イベントに偶然訪れたベテランのデザイナーは、彼はソウルフルな音楽がコアな人物なのだが、その音圧の中に共鳴ポイントを見いだして新しい音楽の世界に希望を持った。また、今年の春、京都の美大を卒業して九州に帰った女性は琴線に触れるタイミングのたびに、BGMのようにこの時の音と風景がフラッシュバックする。そして、ぼく自身の中でも、そしてこのイベントを訪れた多くの人の中で何かが始まった。それは、決して特定の人だけが持ちうるドラマチックなものではない。人間は時間的にも、空間的にも、意識的にも移動し、移ろい、変化していくものだということを、この日のイベントは自然に感じさせてくれたのである。

 ふたたび、KAZUMAのプレイが始まる。徐々に、彼がもっている変幻自在なフレキシビリティが発揮され、イベントに新しいタイプの緊張感がもたらされる。そして、次にはレイ・ハラカミの登場。先のアーティストとはうってかわって、オモチャ箱をひっくり返したようなハイプな解放感に観客がわく。それでも、イベントを通 しての実験的精神は失われず、かなり動きのある演奏だったのではないか。レイ・ハラカミは観客の反応に順応に音を合わせ、抜群のインタラクションでCLUB METEROを音の渦で埋め尽くす。

 一通りのスケジュールをこなしたあとは、各メンバーによるフリーなDJプレイとなる。張りつめた糸がいい具合に切れたようなクラブ空間。こうして、ノイズもテクノも現代音楽も、そしてディスコミュージックをも軽く飲み込むイベントとして収まった。しかもそこには散漫さはカケラもなく、イベントに来た人々は確かな何かを持ち帰ったのである。

(文責・DUNE)

 

 

featuring
Experimental Sound Performance:

How They Get the Way They Are Version.2
Toru Yamanaka (dumb type)
softpad (Takuya Minami+Tomohiro Ueshiba)



LIVE P.A.:
Yoshihiro Hanno (multiphonic ensemble)
Rei Harakami (Sublime)
Koji Marutani (Digital Narcis)
Makoto Yoshihara (teleferique / France)

DJ: KAZUMA
Installation: WEB

 

14th SEP. 2000
at club METRO
KEIHAN MARUTAMACHI ST. NO.2 EXIT
INFORMATION: 0757524765